汝早く信仰の寸心を改めて、速やかに実乗の一善に帰せよ。
しかればすなわち三界は皆仏国なり。仏国それ哀えんや。
十方は悉く宝土なり。宝土何ぞ壊れんや。国に衰微なく、土に破壊なくんば、身はこれ安全にして、心は禅定ならん。この詞、この言、信ずべく崇むべし。
『立正安国論』
コロナ禍も四年目を迎え、今後どのように収束するのか、多くの人の関心事と思われる。
そうした中で、昨年さらに人々を悩まし注目したのがロシアによるウクライナ侵攻であった。
さらには、中国の独裁体制の強化、北朝鮮の度重なるミサイル発射とアメリカの対応、緊迫する台湾情勢などを考えるとき、再び世界が戦禍に見舞われることにならないように祈るばかりである。
一部の独裁者による侵攻や独善的な考えによって尊い命が失われていくのを見ると、人としての心がないものかと考えてしまうのである。そんなとき冒頭にあげた日蓮聖人が北条時頼にあてた『立正安国論』の一節を思い浮かべるのである。
「貴殿(時頼)は一刻も早く邪な信仰を捨てて、ただちに唯一真実の教えである法華経に帰依しなさい。そうするならば、この世界はそのまま仏の国となります。仏の国は決して衰えることはありません。十方の世界はそのまま浄土となります。浄土は決して破壊されることはありません。国が衰えることなく、世界が破壊されなければ、わが身は安全であり、心は平和でありましょう。この言葉は真実であります。信じなければなりません、崇めなければなりません。」と示される。
すべての人々が仏の心を持つならば、安穏な社会が実現し個人も幸せになるというのが仏の教えであり、日蓮聖人の願いでもある。
今年こそコロナと戦争状態が集結し、人との触れ合いも復活し、世界全体の危機感が除かれることを祈る。
令和5年元日
日蓮宗本山 池上 大坊 本行寺
住職 中野日演